コーヒーは、「アラビカ種(Coffea arabica)」と「ロブスタ種(Coffea canephora)」の2つが代表的な品種として知られています。この他にもいくつかの品種が存在しますが、世界のコーヒー生産の大部分を占めるのはこの2つです。それぞれの特徴や栽培環境、味わいの違いについて詳しく見ていきます。

アラビカ種(Coffea arabica)
特徴
アラビカ種は、全世界のコーヒー生産量の約70%を占めており、最も広く栽培されている品種です。エチオピアが原産地とされ、現在では中南米、アフリカ、アジアなどの高地で栽培されています。アラビカ種は標高1,000~2,000メートル以上の冷涼な気候で育つため、手間がかかる一方で高品質なコーヒーを生産することができます。

味わい
アラビカ種は、香りが豊かで酸味があり、繊細でバランスの取れた風味を持つのが特徴です。花のような香りやフルーティーな甘み、さわやかな酸味が感じられることが多く、スペシャルティコーヒーの多くはこの品種から作られています。

主な品種
アラビカ種にはさまざまな亜種や品種が存在し、それぞれが異なる特徴を持っています。以下に主要なものを紹介します。

ティピカ(Typica): アラビカ種の中で最も古い系統で、エチオピアから派生したオリジナルの品種。甘みがあり、クリアな酸味が特徴。
ブルボン(Bourbon): フランス領ブルボン島(現レユニオン島)で発見された品種で、豊かな甘みと複雑な風味が特徴。
ゲイシャ(Geisha/Gesha): パナマで有名になった品種で、ジャスミンのような香りと柑橘系の風味が特徴。
SL28・SL34: ケニアで開発された品種で、フルーティーな酸味が強く、高い評価を得ている。

ロブスタ種(Coffea canephora)
特徴
ロブスタ種は、全世界のコーヒー生産量の約30%を占めています。アフリカが原産地で、アラビカ種に比べて高温多湿な環境でも育つため、標高の低い土地でも栽培が可能です。また、病害虫に強く、栽培コストが比較的低いことから、量産型のコーヒーやインスタントコーヒーの原料として広く利用されています。

味わい
ロブスタ種の特徴は、苦味が強く、酸味が少ないことです。アラビカ種と比べて香りが弱く、粗野な風味とされることが多いですが、深煎りにすることでコクが引き立つ場合もあります。エスプレッソのブレンドに使用されることも多く、クレマ(泡)を厚くする効果があります。

主な産地
ロブスタ種の主要生産国には、ベトナム、ブラジル、インドネシア、ウガンダなどがあります。特にベトナムはロブスタ種の最大生産国で、世界的な供給量の多くを占めています。

リベリカ種(Coffea liberica)
特徴
リベリカ種は、アフリカ西部のリベリアが原産地で、主にフィリピンやマレーシアなどの東南アジアで栽培されています。生産量は非常に少なく、世界の市場ではほとんど流通していない珍しい品種です。

味わい
リベリカ種の風味は、アラビカ種やロブスタ種とは異なり、独特の香りと苦味を持っています。フルーティーでフローラルな香りが特徴的ですが、その一方で酸味が弱く、クセのある味わいと感じる人もいます。

その他の品種
近年では、野生種や特殊な交配種も注目を集めています。たとえば、以下のような品種が挙げられます。

カティモール(Catimor): アラビカ種とロブスタ種の交配で生まれたハイブリッド品種。病害虫に強く、高収量が特徴。
パカマラ(Pacamara): パカス種とマラゴジッペ種の交配で生まれた品種で、大きな豆と複雑なフレーバーが特徴。
ハイブリッド種: 地域や気候に適応するために開発された品種で、近年の気候変動に対応する目的でも研究されています。
品種による味の違い
コーヒーの味わいは、品種だけでなく、栽培される地域の気候や土壌、標高、収穫方法、加工方法など多くの要因によって決まります。しかし、品種が与える影響は非常に大きく、同じ地域で栽培されたコーヒーでも、品種が異なると風味が大きく変わります。

品種の選び方とトレンド
消費者の嗜好が多様化する中で、特定の品種を選ぶことがコーヒーの楽しみ方の一つになっています。特にスペシャルティコーヒー市場では、ゲイシャやブルボンなどの希少品種が人気です。一方で、持続可能な農業や気候変動に対応するため、病害虫に強いハイブリッド種の開発も進められています。

コーヒーの品種は、私たちが味わう一杯のコーヒーの中に、自然や人々の歴史が織り込まれていることを感じさせてくれます。それぞれの品種の特徴を知り、自分に合ったコーヒーを見つける楽しさを、ぜひ味わってみてください。